会場に着いて注目すべきは、グランドピアノの位置でした。当然の事ながら、トリオ編成の時は他に楽器が置かれている為、ピアノは端に寄せられている感じがありましたが、今回はピアノだけの編成という事で、それは堂々とステージの中央に置かれていました。このお店では初めて見る光景でしたが、改めて、この日がソロピアノの日なのだという確信を得たと共に、気合いを入れ直す瞬間にもなったように思いました。
今回は有り難い事に、会場は満席という状況になりました。ふと思い立ってブッキングさせて頂いたソロピアノライブでしたが、予想以上に反響は大きかったようです。勿論、今回が初めての試みだから…という部分も大きいとは思うのですが、多くの方々に足を運んで頂けて本当に嬉しかったです。会場は既に熱気に包まれ、どのようにライブを展開していくかが鍵となる感じがしました。
今回のライブは、わりと曲を決めて取り掛かりました。…というのは、普段地方でやっているような自分のソロピアノライブですと、ジャズの即興的な部分を生かして、わりとその場で選曲を行っている事が多かったからです。何曲かだけ、取り上げる曲を決めてはいますが、ステージのどのタイミングで演奏するかというのは、ステージの空気次第で、それを読みつつ進めていくのが、何だか自分にとって遣り甲斐も感じていたからです。
しかし、今回は初の東京でのソロピアノライブという事で、ピアニスト竹内大輔の現在までの姿を表現したかったと言いますか、この機会だからこそ披露出来る流れ…というのを再現したかったのです。具体的には、ジャズピアノを初めて、どのような音楽に触れて、そしてどのように自分の演奏技術に生かして今日に至ったのか…という感じです…。1ステージ目の1曲目に演奏した“Armando's Rhumba”は、自分自身の挨拶、紹介に近い選曲でもありましたが、その後の曲達は、ほぼ自分のルーツ音楽に沿った内容となりました。
特筆すべきは、クラシックの曲と、ゲーム音楽を取り上げた事でしょう…。クラシックは3歳から習っていたものなので当たり前かもしれませんが、実はゲーム音楽というのも、自分の音楽の歴史にとって、切っても切り離せないものなのでした…。曲は、自分が中学生後半の頃に非常に流行った“クロノトリガー”からメドレーとしてお送りしたのですが、やはり反響は大きかったです。特に、自分世代に近い方々は強く共感して頂けたようです。ゲーム音楽は個人的に好きなジャンルではあるのですが、なかなかバンド編成ですと実現が難しく、今回は正にチャンスの時だと思ったのでした。こちらも思い切りな部分がありましたが(笑)、やって良かった選曲だと思いました。
自分自身のルーツ音楽を探る1ステージ目に対し、2ステージ目は自分のオリジナル曲を中心にお届けしていきました。普段はピアノトリオや TRI4TH 等で演奏される曲を、ピアノ1台だけで再現するというのは、そもそもが“再現”という方向ではなく、ソロピアノならではのアレンジになるべきだと思うのですが、自然にそういった方向に持っていけたと思います。…とは言え、事前にガチガチにソロピアノ用にアレンジを考えてきたわけではなく、その場の演奏の意識で、ソロピアノらしい情景を作っていけたと言いますか…、そういった状況が良かったのだと思いました。その中で、自分の大好きなピアニストであるミシェル・ペトルチアーニのオリジナル曲、“Trilogy In Blois”を全て弾けた事は、自分にとっても「やっと」…という思いでもありました。この曲、ブロワ3部作…というタイトル通り(ブロワはフランス中央部に位置する都市で、曲のタイトルに想いを馳せて、自分は2008年にこの場所を旅行しています〔竹内大輔の写真日記(〜2009)、旅日記 23.(フランス、パリ編…2008.7.23~7.29)参照〕)、“Morning Sun In Blois”、“Noon Sun In Blois”、“Night Sun In Blois”の3曲の連作となる曲でして、そもそもがソロピアノの為に作られたような曲だったので、これもまた、今回しか弾けない選曲でもあったのでした。…いや、地方演奏に行った時にも弾こうと思えば弾けたのですが、まだ自分の技術が追いついていなかったと言うか、自分のモチベーション的にも、今回のような状況でなければ、真剣に弾けないような気がしてしまっていたのでした(過去に、その中の1曲だけとか、短くピックアップして演奏した事はありました)…。本当に今回、「やっと」、曲の全容が弾けたのでした…。
…と、文章にすると、どうしても慌ただしい印象になってしまうかもしれないのですが、今回は本当にじっくりと演奏させて頂きました。時間配分も慣れていなく、一体どれだけ弾いていたかもよく分からないのですが、ピアノと1対1の関係になれた時間はとても楽しく、個人的にはあっという間の時間でした…。その代わり、弾き終わった後の疲労度と言ったら、これまでに無いくらい、半端なものではありませんでした…(笑)。確かに、ステージに上がってしまうと逃げ場は無く、喋るか弾くか…という状況になってしまうわけで(笑)、他のメンバーの助けを借りて…という事も一切出来ないので、その負担がやはり最終的に身体に回ってきてしまっていたのでしょう。ただ、ソロピアノライブをやる事によって、何だか自分自身が一回り大きくなれたような、そんな想いが涌き上がってきたのも事実です。やはり、ピアニストにとってソロピアノライブというのは、一種の自分自身との勝負の場のような、そんな舞台になっているのかもしれませんね。…また今後のライブで自分を磨きつつ、改めてこの場に帰って来れるように、やはり日々の音楽生活が大切だと感じた1日でもありました。…多くのお客さんにお越し頂き、本当にありがとうございました!…またどうぞよろしくお願いします!
●今回のセットリストです!
・1ステージ 1、Armando's Rhumba
2、Satin Doll
3、It's Only A Paper Moon
4、Here, There And Everywhere
5、Nocturne Op.9 No.2
6、クロノトリガーメドレー
[時の最果て〜時の回廊〜風の憧憬〜時の最果て]
7、Take The A Train
・2ステージ 1、Overseas(オリジナル)
2、Everybody Knows That(オリジナル)
3、Monte Fiesole(オリジナル)
4、Caravan
5、Trilogy In Blois
[Morning Sun In Blois〜Noon Sun In Blois〜Night Sun In Blois]
6、Spain
・アンコール ・Casa Familia(オリジナル)
☆外苑前 Z・imagine のHP…http://www.radio-zipangu.com/zimagine/
クロノトリガーメドレーは原曲知らなくってもきれ~いな感じで心地良かったのです。
終盤に向けて若干(華麗な)格闘技を見ているような…聴いている側ももちろん気は抜けません!
渾身の“Trilogy In Blois”心を掴まれます。私はミシェル・ペトルチアーニの
solo LIVEのCDを持っており、この曲聴いてしまおうかと思うも昨夜のライブの音が
耳に残っており余韻を大事にしたくて当分聴けそうにないことに気づきました。
たくさんの方が聴きにいらしていた中、私が長々と(いくらでも書いちゃいそうな)
記すのもこのへんにしますが、まだまだ聴きたい方はたくさんおられるはず。いつかの次回に向け
またよろしくお願いいたします。また会場の中の人をフィレンツェ郊外とかパリ郊外へ連れ出して下さいませ~。
興奮覚めないうちのブログ更新もありがとうございました。
今回の1ステージ目は、今までやってこなかったような進行に
してみようと考えてみました。また、ソロピアノライブだからこそ
出来るステージを…という事で、今回のような選曲になった次第で
ございます(笑)。“Trilogy in Blois”、やっと弾けました…。
ソロピアノライブ、また開催出来たらと思います。その時も
どうぞよろしくお願いします。どうもありがとうございました!
はい、今回はそうですね…、緊張と言うか、気合いと言うか…、
自分は本番の直前でしか緊張しないタイプなのですが、当日の
リハーサルが終わってから、お客さんをお店に入れる辺りの
時間…、あの辺りがピークになる感じです(笑)。胃をギュッと
掴まれるような、何とも変な時間でしたが、また一回り大きく
なれた気がします。新しいオリジナル曲、楽しみにしていて下さい!