可部線は、元々横川駅を起点とする私鉄だった為、駅間が短かったり、線路ギリギリまで住宅が接近するような、いわゆる私鉄らしい沿線風景が広がっています。これは1936年に国有化されても基本的には変わらず、私鉄らしい風景にJR(旧国鉄)の車両が走るというのは、趣味的にも見ても面白い路線ではあります。
現在は横川駅〜可部駅間の14kmを結ぶ、わりと短い路線ですが、かつては可部駅より先の、三段峡という駅まで、更に45km以上もの路線が続いていました。この廃止された区間は、国有化された後に国が建設したものでしたが、建設中に既に赤字の見込みがある事にも関わらず開通した区間でもありました。こちらは非電化区間となっていて、本数もそれは少ないものでしたが(1日に8往復で、三段峡駅まで達していたのは1日5往復のみ)、結局2003年に廃止…。そして現在の営業区間となるのです。…ですが、2013年になって、可部駅より先の1、6km区間だけ電化延伸される事が決まりました。開業は2016年となる見込みで、完成すると国鉄時代から廃止されてきた路線が初めて復活するケースとなるようです。
そんな可部線は、正直地味な印象が強い路線ではあるのですが(笑)、前述した私鉄らしい雰囲気とJRの車両との取り合わせが楽しく、しかも朝夕は使用車両も増えるので、意外と見所の多い路線ではないかと思いました。…という事で、朝夕に使用される車両も狙う為に、この日は広島でのライブ後の次の日にも関わらず、朝7:30にはホテルを出て敢行させてきました(笑)。今回が初めてでもあった可部線、どうぞ御覧下さいませ!
●日時…2013年12月24日 ●距離…14,0km ●駅数…12駅
可部線の起点は横川駅です。広島駅からは西に3km程の位置にありますが、JRの駅としては広島の繁華街にあたる紙屋町に一番近い駅であるという事と、この駅に乗り入れている広島電鉄が7号線(紙屋町方面に直接行ける系統です)の運行を開始した事もあって、顕著に利用者は増えているようです。
そんな中、可部線は一番北側のホームから発車します。乗り入れている広島駅〜横川駅間は、JR山陽本線と線路を共用しているので、朝ラッシュ時等では、山陽本線の列車に道を譲ったりしていますが、こう見ると、お互いに運行本数はそれなりに多そうな気がします。実際、可部線のダイヤは朝ラッシュ時が約10分毎、日中は概ね20分毎という感じで、JRの地方ローカル線にしては利用しやすい方ではないでしょうか…。確かに、途中の緑井駅くらいまでは住宅も多かったので、いわゆる通勤路線的な扱いにもなるのかもしれませんね。現在は可部駅が終点で、延長距離もそんなに長くはないので、よりその性格が表れているような気もします。
使用車両は105系が多く、現在は殆どが黄色1色という、味気無い塗装に塗られています。これはJR西日本が車両の単色化を図っている為で、北陸地方や山陰地方等でも、別の色の単色化が進んでいます。105系には大きく分けると2種類あって、1つは新規製造された3扉車のグループと、もう1つは103系から改造編入された4扉車のグループです。可部線にはどちらも使われていて、特に4扉車のグループの車内は旧国鉄の様子を未だに保っているので、現在の東京では味わえない雰囲気が嬉しくなります(笑)。
さて、横川駅を出発しましょう。駅を出るとすぐに太田川(上写真参照)を渡り、少し過ぎるともう次の駅の三滝駅です。横川駅からの距離は僅か1、1kmで、可部線にはこんな短い駅間が多いです。
暫くは太田川に沿って走り、住宅街の中に入ると安芸長束駅です。この辺りこそ、本当に私鉄らしい風景と言えそうですが、そんな中で不釣り合いなのが、朝夕ラッシュ時を中心に使われる113系、115系です(左下写真参照)。この車両は近郊形電車と言われ、どちらかと言うと山陽本線を走っている方が似合うのですが、ラッシュ時間帯には助っ人として運行されているのです。日中は運行されないので、これもまた可部線の魅力の1つと言えるかもしれませんね。
更に北上します。この時点で朝9:30頃になっていましたが、北側に見える山の麓には朝霧が立ち込めているのが分かると思います(右上写真参照)。中国地方ではよく見られる光景で、夜と朝の温度差が激しい為でしょう。そんな風景と住宅地の取り合わせというのも、可部線ならではなのかもしれません。
大町駅に着きます。この駅は、接続する広島高速交通アストラムライン(右上写真参照)が開業した1994年にJR側にも新設された駅で、可部線では3番目に乗降客数の多い駅でもあります。上写真を見ても分かるように、周囲は完全に宅地化されていて、大町バスターミナルとも直結しています。ここまで、横川駅から5つ目の駅ですが、まだ6、5kmしか来ていない事を考えると、やはり可部線の駅間は基本的に短いようです。ちなみに、次の緑井駅までは、当駅から僅か0、8kmの距離となっています。
時刻も10:00過ぎになると、線内を走る列車は105系の2両編成ばかりになります。…とは言え前述のように2タイプの車両が存在し、しかも3扉車には旧塗装(左上写真参照)の車両も使われるので、意外にバラエティに富んでいると言えるのかもしれません。全車両ロングシートなのは面白くないですが(113系や115系は転換クロスシートが基本です)、そもそも短い路線なので、これでも良いのかもしれません。しかし、車内は意外に混んでいて、それは次の緑井駅まで続きます。この駅は、ラッシュ時には折り返し列車も存在する駅となっています。
緑井駅を過ぎると徐々に住宅は少なくなってきますが、こちらも折り返し列車が設定されている梅林駅を過ぎると、それはより顕著になってくる感じでしょうか。その次の上八木駅(下写真参照)は1面1線という事も手伝って、だいぶローカル風情が増してきた印象でもありました。勿論無人駅です。
上八木駅を出ると、右にカーブして再度太田川を渡ります(下写真参照)。川沿いに出ると、見晴らしの良い景色が広がっており、川下側を見ると、遠くにJR芸備線が走っているのも見えたりします。どちらも列車は広島駅から運行されており、この辺りでは両線が接近している区間でもあるという事です。
さて、太田川を渡ると、やはり無人駅の中島駅となり、次はもう終点の可部駅です…。だいぶ早く着いてしまった印象があるかもしれませんが、実際は単線の為の列車の行き違いがあったりして、広島駅からの所要時間は、約40分という感じです。以前、この先の三段峡駅まで路線があったと思うと、何だか寂しい感じもしてしまいますが、前述したように、ここから1、6kmの延伸が決まっており(駅は2つ設けられるそうです)、そうなると、また乗りに来なくてはなりませんね(笑)。
可部駅は東口にある昔からの駅舎(右上写真参照)と、2007年に出来た、バス乗り場も有する西口(左下写真参照)が存在していて、この規模の駅にしては珍しいかと思われます。広島バスターミナルへの路線バスが頻繁に発着していて、可部線の状況も厳しそうですが、実際に可部駅を利用する乗客は年々減っており、利用者数が増加している大町駅、緑井駅、梅林駅と比べると、これが現実だと思わざるを得ません。2016年の電化延伸に期待したいものです。
そして、延伸される区間も少しだけ歩いて見てきました。実際には2003年に廃止された区間なので、まだまだ荒い雰囲気が続いていますが、少しずつ整備され、電化開業時には見違えるような状態になる事でしょう。列車の本数も、現在の可部駅までの列車がそのまま延長するような形で維持されるらしく、周囲がどのような発展を遂げるのか楽しみです。
ひとまずは可部線の“さんぽ”はこれで終わりですが、ただのローカル線ではなく、ある意味で希望が約束された路線でもあり、今の段階で乗っておいて良かったと思いました。また3年も経つと状況が変わるのかもしれませんが、その時も見届けていきたいと思います。
…さて、2014年はどのような路線に乗りましょうか…♪