何と言っても新幹線が完成し、台北を拠点としても各地を柔軟に回る事が出来るようになりました。また、東京も羽田から国際線が再就航し、台北も市内に近い松山(ソンシャン)空港への便が飛ぶようになり、東京からのアクセスも飛躍的に向上したのです。たかが交通事情…と思うかもしれませんが、これは人や物の流れを大きく帰る要素でもあり、是非ともそれらの事情を体験しつつ、今の台湾を満喫してみたくなったのです。日にち的にも5日間とれたので、ゆったりと台湾の空気に触れる事が出来ました。どうぞ御覧下さいませ!
●チャイナエアラインのビジネスクラス
今回の旅の拠点も、やはり台湾最大の都市、台北にしたいところです…。台北の空港は、以前からある松山空港(市内に隣接)と、1979年に開港した、台北郊外に位置する国際線専用の桃園(タオユェン)空港があり、以前は日本からは桃園空港に行くしかなかったのですが、現在では羽田空港~松山空港間を飛ぶ便も就航しており、本当に便利になりました。台湾の松山空港と桃園空港は、東京の羽田空港と成田空港の関係に似ており、桃園空港は市内から結構離れています。逆に、松山空港の市内の近さというのは、羽田空港以上のもので(そもそも台北市内にあるので)、例えば台北駅からは、タクシーなら15分程という感じでしょう。海外滞在では時間を有効に使いたいところで、その意味でも松山空港は大きな存在となっているのです。
今回は台湾を代表する航空会社、チャイナエアライン、しかも奮発し、ビジネスクラスを利用させて頂きました。…とは言え、チャイナエアラインのビジネスクラスは安く乗れる事で有名なのです。今回、航空券を探している時に、エコノミークラスで東京(羽田)~台北(松山)間、往復2~3万円前後のチケットが多く出てきていたのですが、安いものが売り切れてしまって、結局は4~5万円のチケットしか残っていない状態でした。そんな時に、ビジネスクラスの料金を見てみると、安いもので58000円というものが出てきたのです(勿論、往復です)。単純に考えて、先程の料金に+1万円程で、往復共にビジネスクラスを楽しめてしまうのですから、これは利用しない手は無いと考えました。航空券の値段設定というのは複雑で、常にエコノミークラスとの差額が1万円前後というわけではないのですが、この時はタイミングが良かったのでしょう。一気に旅へのテンションも上がってしまいますよね。
ビジネスクラス利用者は、空港のラウンジ(左上写真参照)も使う事が出来ます。ただ、台湾での滞在時間を多めにとれるような便設定にしたので、今回の羽田空港は7:20発の便を選ばさせて頂き、あまりラウンジでゆっくり…というわけにはいきませんでした。羽田空港発としても、かなり朝が早めの便ですが、これも羽田空港だから出来る事です(成田空港では、そんな時間に空港に着けません…笑)。ラウンジから東京の朝日を拝みつつ、ちょっとハイソな気分に浸りながら(笑)、ビジネスクラスのお客となったのでした。
チャイナエアラインのビジネスクラスは安め…と書きましたが、だからと言ってサービスまで安い感じものではななく、そのグレードはむしろ高いものです…。座席のリクライニング角度も深く、席同士のプライベート感も大きく、食事だって豪華です。今回乗った飛行機は、中距離用に使われているA330-300という機種なので、ビジネスクラスもこれで“中・短距離用”の設定なわけですが、いやいや、それでも十分豪華ですね。朝早く起きて乗っている身としては、この設備は有難く、台湾での旅をフレキシブルに動ける為にも、機内で寛げる状況…というのは非常に重要だったりするのです。
…美味しい機内食を堪能しつつ、大きなモニターで映画を鑑賞していると、台北までは本当にあっという間です。タイムテーブル上では4時間ですが、実際の飛行は3時間20分ぐらいという感じでしょう。台北には、現地時間で朝の10:15に着くスケジュールでしたが、これは現地で泊まっていたとしても、観光に繰り出すのがこれくらいの時間だったりするので(笑)、この便を使えば、旅の初日もフルに動ける事同然です。台北到着時は雨が降っていて、この先の旅計画をどうしようかと考えましたが、この時間なら慌てずに、ゆっくりと考えられます。旅先では、常に余裕を持つ事が大切です。その意味では、この時間に着くフライトというのは、値段以上に大きな余力を与えてくれているような、そんな気がしたものでした。
ひとまず、台北駅前に予約したホテルまで出向き、大きな荷物を置いてきてしまいましょう。恐らくタクシーで行くのが一番早いでしょうが、せっかくなので、2009年にここまで伸びてきたMRT(台北市の地下鉄みたいな存在です)を使って、今後の計画を練る時間も設けつつ、ゆっくりと動きたいと思います。まだまだ時間はあるのですから♪
●台湾新幹線で、高雄(カオシュン)へ
ホテルは台北駅前にとって大正解でした。荷物を置き、身軽な格好になって外に出ると、既に台湾の交通の要衝にいるのですから、色々な選択肢をとる事が出来ます。…という事で、どうも台北の天気が雨でパッとしないので、早速新幹線に乗って、台湾第2の都市、高雄まで出向いてしまう事に決めました。高雄の天気は曇りとの事で、これなら外を歩いても問題無さそうです。新幹線も初めてですし、高雄という街も初めて…。これは楽しくなる事、間違い無しです♪
台北駅の駅舎は本当に立派で、これぞ台湾の代表する駅!…と自信を持って言えそうな雰囲気を持っていますが、外観だけではなく内部も充実していて、最近では地下街も発達してきているようで、この駅周辺に全ての機能を集約させた感はありますね。外からは電車が見えないのは、この区間は全ての鉄道が地下化されている為でもあり、チケット売り場などは地上にありますが(地下にも勿論ありますが)、改札は地下に存在しています。
これから乗る台湾新幹線も、当然の如く地下から発車します。こちらは切符売り場は基本的に地下に集約されていて、ほぼ日本と同じ感覚で切符が買えるので、日本人には分かりやすい販売システムと言えるでしょう。…ところで、台湾新幹線、台湾新幹線…と言っていますが、こちらは愛称に近く、正しくは台湾高速鉄道と呼ばれるものです。略してなのか、駅では“高鐵”と表示されており、台北駅では、こちらの表示に向かって歩いていけば間違い無く辿り着けます。…とは言え、現地の人でも“台湾新幹線”と呼んでいたりするらしいのですが(笑)、ここでは現地に倣い、“高鐵”と呼ばせて頂きましょう。
高雄駅(高鐵では“左營(ズゥオイン)駅”になります)までは、指定席利用でNT$1490。日本円に直すと、NT$1(ニュー台湾ドル)が約2,7円(2012年2月時)なので、約4000円という計算になります。これは、約1時間半乗っている状況からすると、日本より遥かに安い値段設定ですよね(ちなみに、同じくらいの時間を乗っている思われる、東京駅~名古屋駅間では約1万円くらいです)。自由席利用だと、更にNT$45(約120円)程安くなりますが、ここは指定席利用で良いでしょう。…とは言え、台北駅は始発駅なので、早めに向かえば大体は座れるとは思いますが…。
…というわけで、高鐵車両に乗り込みました!…見て分かる人には分かるかもしれませんが、高鐵の車両は、日本の新幹線、700系をベースにしており、その各部に共通点を見出す事が出来ます(高鐵の車両は、700T型といいます)。外観は、正面や塗装には台湾独特のアレンジが施してあるものの、車内の雰囲気は、日本の新幹線そのままな感じでしょう。これは、実際に日本の新幹線技術(JR東海、JR西日本)を車両開発に導入した為で、それが“台湾新幹線”と呼ばれている所以でもあります。しかし、全てが日本の技術かというと、そうでもなくて、当初は欧州システムの技術を使用する事になっていた経緯もあったので、線路や運行システムも含めて考えると、日欧混合によって成り立っていると言える路線になっています。
難しい話しは抜きにして、日本から離れて台湾に来て、日本の新幹線をベースにした車両が活躍しているというのは嬉しい限りです。また、在来線とは完璧に独立した路線である事や、全体的な雰囲気も相まって、乗っていてもやはり、日本の新幹線風な安心感があるような印象を受けました。これは、同じ、日本の新幹線の車両技術を導入した中国の車両に乗った時〔立川商店、中国、泰山ツアー(2010.9.3~9.7)参照〕とは、だいぶ違う感じでしたね。日本人だからこその感想かもしれませんが…。
列車は、台北駅を出ても暫くは地下を走り、隣りの板橋(バンチャオ)駅という、これまた自宅の近くの地名のような名前に親近感を覚える駅(笑)を過ぎ、やっと地上に出ます。この時点で既にスピードは上がっており、みるみる内に建物が後方に流れていきます。高鐵の最高速度は時速300km/時。日本の700系は285km/時だったので、これは流石ですね(日本では700系列では、後に登場したN700系で時速300km/時を達成しています)。
あまりにスピードが速いので、ゆっくりと景色を眺めてる余裕がありません。最初は、初めて乗る路線ですし、じっくり見てやろう…と思っていたのですが、徐々に目が疲れてきてしまいました。朝に東海道新幹線に乗っている時と、同じような感覚とでも言いましょうか(笑)。…とは言え、途中の台中(タイジョン)駅や台南(タイナン)駅は停車したので確認出来ましたし、南に下るにつれて、亜熱帯から熱帯気候になっていく雰囲気も何となく感じ取れたのは、日本では経験出来ない収穫だったと思います。
…そうこうしているうちに、台北駅を出発してから約1時間半、終点の左榮駅に着きました。高雄市へは、ここから在来線や地下鉄で向かう事になります。東海道新幹線の新大阪駅みたいな位置関係と言えば、分かりやすいでしょうか。ここまで、高鐵が完成するまでは、台北から特急列車でも約4時間は掛かっていたので、やはり高鐵の影響は計り知れなさそうです。高雄が台湾から日帰り圏内になった事も頷けるというものです。…そして、この高鐵の乗りやすさが安心感に繋がっているとも言え、日帰りが“気軽に”…になった事が、一番大きいような気がしました。それは、日本の新幹線が開通した時と似ているのではないかと思うと、台湾に新幹線技術を提供した国出身の者として、とても嬉しく思うのです。
まだまだ続きます!