昨日は中目黒の楽屋(らくや)にて、自分のピアノトリオと Deep River との2マン・ライブをやってきました。Deep River は説明するまでもなく、サックスの郷原君がリーダーを務めているバンドですが、このバンドと今の時期に対バンを行うのは、非常に意味のある事でした。
北海道の伊達という所で、一昨年から毎年この時期に行われる“New どさコン”というイベントがあるのですが、それは東京からバンドを呼んで演奏して貰って、その代わり、伊達という場所をPRして貰おう…という主旨のものです。バンドは2年交代で、それの一昨年、昨年の演奏担当が Deep River だったのですが、その次はどのようなバンドにするかは、Deep River リーダーである郷原君に選べる権限があるらしく、それで有難い事に自分を選んでくれました。もう来週に迫っている7月23日(土)に、自分のピアノトリオで伊達市で演奏を行うのは既に告知済みですが、今回北海道に行けたのは、そうした背景があったわけなのです。
そこで自分が前々から思っていたのは、自分達が伊達に行く前に、Deep River とライブを企画してみたい…という事でした。ライブのタイトルが“引き継ぎライブ”になったのは最近の事でしたが、正に、一昨年から続くこのイベントのバトンを引き継ぐという意味で、何かの切っ掛けは作っておきたい感じだったのです。郷原君自身とは何回も共演している自分ですが、バンド単位での共演は初めてになるので、貴重という側面も覗かせるライブにもなっていたと思います。
…ただ、初めての共演…とは言え、お互いのメンバーは皆、昔から何度も会っているという、よく知った仲…。リラックスした感じで当日のリハーサルは行われ、楽屋自慢のアジア系フードに舌鼓を打ち、静かに本番が始まるのを待ちました。
しかし、その“静かに”…は、本番直前で打ち砕かれました。最初のステージは Deep River にやって貰う事になっていたのですが、その前に、今回のライブの主旨を説明しておく必要があると思い、郷原君と自分とで、少しステージ挨拶をさせて頂く事にしていたのです。…まあ、それ自体は良かったのですが、本番5分前くらいになって、先程外に出掛けて行ったベースの池田君から電話があり、「俺、お店に財布忘れてないですかね」…と言うではありませんか。財布を忘れて出て行ったのは知っていましたが、なんと、現在サイゼリヤにいて、財布が無いので支払えない…と言うのです(笑)。何故にこんな時に!…と思いましたが、自分が届けに行く他はありません。…と言うのは、今日出演するメンバーは、自分と池田君以外はもう、Deep River としてステージに上がらなければならなかったのですから…。
自分は、走りました…。しかし、肝心のサイゼリヤが見付けにくい場所にあり、結構な時間のロスをしてしまいます。結局、財布を届けに行って、楽屋に戻ってきたのが、スタート時間から約10分遅れの19:40…。しかも、Deep River の面々が、今正にステージに上がっているところでもありました…。
結果的に、ギリギリで郷原君と自分でステージ挨拶は行えたのですが、自分は汗だくですし、結構息を切らしていますし(笑)、上手く説明出来ていたのかよく分かりません…。ただ、今回のライブを待ち遠しく思っていたのは伝わったかもしれないので、良しとしてしまいましょう。こうして、自分の中では急にバタバタな雰囲気になり、引き継ぎライブは幕を開けたのです。
…まあ、バタバタだったのは自分だけなので(笑)、Deep River の演奏は順調に進んでいきました。今回、間近で Deep River のライブを見るのは2回目ですが、サックス・カルテットという編成なものの、やはりポップス志向が強いバンドだなと、改めて感じますね。恐らく、郷原君自身の曲に対する拘りと、何と言ってもオリジナルのメロディの綺麗さでしょう…。自分は郷原君と、デュオ編成でなら何度もライブを行ってきましたので、今回も殆どが知っている曲だったのも面白かったです。
さて、そんなステージの途中で、今度の伊達市で行われるイベントの主催関係者の方が今回いらっしゃているという事で、その方を紹介させて頂きつつ、伊達の主催者から預かった信書を、そのままステージ上で読み上げるという時間を設けさせて頂きました。それは大変温か味のある文章で、Deep River のメンバーから、自分のピアノトリオのメンバーまで、1人1人名前を挙げて下さっていて、今までの御礼と、これからの期待が込められた、非常に有難い内容でした…。改めて、これから北海道に行く思いと、バトンを引き継いだ感覚が、身体に染み渡る感じがしたものです。
そして、そのバトン引き渡しの延長…ではないですが、Deep River の曲に自分も1曲だけ参加させて頂きました。曲は、郷原君が伊達市の為に作った(New どさコンでは、その出演者の2度目の参加の時に、伊達を体験して生まれてきた曲を書いてくる事になっているのだそうで…)、その名も“伊達 Sky”で(笑)、北海道の壮大な空をイメージした曲との事でした。Deep River の鍵盤担当であるフジワラミエさんも、この時はキーボードへと移り、計5人での演奏となるのも貴重な感じでしたが、この曲はピアノがイントロを務めているので、自分の役割がそもそも重要です。焦らず、冷静に弾いていきました。
“伊達 Sky”は、自分は勿論初めて弾きますが、Deep River のお客さんからするとお馴染みの曲の筈なので、緊張もいいところです(笑)。しかし、滅多に見られない演奏になっていた部分もあるので、そこは楽しくやらせて貰いました。お客さんにも喜んで頂けたようで、良かったと思います。
その後、いつもの Deep River のメンバーに戻り、全7曲で終了しました。これで1ステージが終わったわけですが、客席も温まってきた感じでしょうか(笑)。そんな雰囲気を引き継ぎ、自分のピアノトリオの演奏へと移ります…。
2ステージ目は、ほぼ時間通りに始まりました。今回は2マン・ライブなので、“少し”(笑)は時間も気にしなければならないのです(笑)。また、いつも全2ステージを基本としている自分のピアノトリオにとって、今回は1ステージのみの演奏ですから、曲も厳選させなければいけません。新しくCDを出したので、そこからの曲を中心にやりたいところですが、初めて自分達をご覧になられるお客さんも結構いらっしゃいますし…。結果、1曲目に“Scramble”、2曲目に“La Cantaola”と、これは新作CDの曲順と同じにしつつ、3曲目は前作のCDから、久し振りに“The Day Of The Black Key”を演奏させて頂きました。このピアノトリオの雰囲気が端的に分かりやすく表現出来る、打って付けの曲だったように思います。
そして、4曲目には新作CDから、クラシック・カバーの“Valse Op.34 No.2”をやりました。やはり自分のステージでは、クラシックの曲も取り上げないわけにはいきません。自分のピアノトリオも、Deep River も、どちらも楽器編成がジャズの基本スタイル…というのは似ているのですが、決定的に違うのは、Deep River はポップス性が強いのに対し、自分達はクラシック性も出してきている…という事でしょう。今回は対バン・ライブだからこそ、その部分を強くアピールしたかったところもあり、お互いにオリジナル性を出せた事と思います。どちらもドラムを担当しているトシさんは、本当に大変だと思いますが…(笑)。
さて、5曲目…。もう時間的にこれが最後の曲となってしまいました(Deep River と比べて、曲の時間が長いというのもよく分かりますね…笑)。曲はお馴染みの“Hagatna”でしたが、これに郷原君を加えて、4人で演奏していきましょう!…サックスも映える曲だと思うので、今回のステージの最後に相応しいではありませんか。
せっかくなので、普段はピアノがアドリブをとる部分はサックスにとって貰い、ラスト直前の部分で、ピアノとサックスのソロの掛け合いを繰り広げていきました。勿論、その前にはドラムの迫力あるソロもあったので、本当に見所が沢山のバージョンが出来上がったと思います。お客さんも大変盛り上がって頂けて、大きな拍手がお店を包み込みました。本当に、感謝の気持ちで一杯の時間でした。
…そして、その拍手が鳴り止む事はありませんでした。このままアンコールへと繋がらせていきますが、今回、既にアンコール曲は思案済みでした。それは、郷原君も交え、そしてミエさんも交え、計5人で、自分がアレンジした“Spain”を演奏する事でした(欲を言えば、Deep River のベーシストである田中啓介さんも交えたかったのですが、ベースが2本は物理的に難しかったので断念しました)。この5人もなかなか珍しいですが、曲のアレンジも更に5人用に…と言いますか、それぞれにメロディの割り振りやソロの割り振り等を決めておき、正にこの日でしか見られないジョイント演奏にしておいたのです。
“Spain”のイントロでも有名な“アランフェス協奏曲”は、ピアノとキーボードだけの2人で進めていき、しかもゆったりと、独自のテンポで演奏していきました。そして本編は、1小節だけのピアノのフレーズの後にバンドが続いていきます。この時点で、普段と違う事になりそうだったのは明白で、自分も面白くなりそうな気配を強く感じたものでした。
この編成では、メロディをとれる楽器が3人いたので(郷原君、ミエさん、自分)、今回は敢えてベース・ソロは無くし、この3人の絡みを全面に出した演奏にしていきました。ソロの連続はかなり見応えがありましたが、コード進行もどんどん複雑になっていくのも、曲のテンションと比例して熱が籠ってきます。そして、テーマを弾いた後のトドメ?はドラム・ソロです。ここでも、ピアノやキーボードやベースのバッキングがあってのソロですから、ここも皆で盛り上げていった感触が残り、本当に、Deep River と自分達トリオで1つの曲を仕上げていっている感じでした。これぞ正にジョイントです。良い物が残せたように思います。
ドラム・ソロの後は、もうエンディングに近付いていますが、本来ならばピアノだけで持っていくところを、今回はサックスとピアノだけで、それこそ即興(コード進行や、テンポ等も決めない、本当にフリーの状態)で、終わりのコード(ここだけ決めていました)まで持っていきました。こうなった時はもう自分の耳だけが頼りで、全ての音を聞き逃してはならない状態です。今までとは違った緊張感を作りつつ、そしてエンディングに入り、無事にコラボ演奏は終了しました。…と同時に、今回のステージも全曲が終了…、それはつまり、無事にバトンの引き継ぎが完了したという事でもありました。…皆さん、本当にお疲れ様でした!印象に残る演奏と共に、個人的にも遣り甲斐のあるものが出来上がったと思います。
今回のライブで、一番気を付けなければいけない事があって、それはただの“対バンライブ”にしたくない…という事でした。お互いがお互いを知っているから…という部分も無くは無いのですが、やはり“引き継ぎ”という意味合いを強くしたく、それこそ1ステージ目から2ステージ目に繋がっていく部分の変化等を楽しみたかったのです。そして、その念願は今回叶いました…。今の自分の思いは、無事に Deep River からのバトンを引き継ぎ、心置きなく伊達での演奏を楽しめる自信に満ち溢れている…と言ったら言い過ぎでしょうか(笑)。
…とにかく、心置きなく楽しめる…というのは確実だと思います。ますます北海道での演奏が楽しみになってきました。あと1週間に迫ってきましたが、無事に行ってきたいと思います♪…どうもありがとうございました!
●今回のセットリストです!
・1ステージ Deep River による演奏
・2ステージ 1、Scramble(オリジナル)
2、La Cantaora(オリジナル)
3、The Day Of The Black Key(オリジナル)
4、Valse Op.34 No.2
5、Hagatna(オリジナル、with 郷原繁利)
・アンコール ・Spain(with 郷原繁利、フジワラミエ)
★7月23日(土)伊達紋別だて歴史の杜カルチャーセンター(伊達市のHP)
Oepn…14:30~、Star…15:00~、
Charge…前売り500円、当日600円、高校生以下無料(要整理券)
Member…(Pf)竹内大輔、(B)池田暢夫、(Ds)佐々木俊之
☆郷原繁利のHP…sgohara.com/wp/
☆Deep River のHP…www.deep-river.jp/
☆池田暢夫のHP…sites.google.com/site/nobuoikedawebsite/
☆佐々木俊之のHP…http://www.toshiyuki-sasaki.com/
☆中目黒楽屋のHP…www.rakuya.net/
Hagatnaが、サックスにぴったりなのが驚くほどでした。
参加メンバー全員の皆さんほんとうに素敵な音楽を聴かせていただいたのですが、この日の佐々木さんは汗のかきすぎだったのか(?)特にかなりの迫力だったと思うのは私だけでしょうか・・・・。
「お財布事件」もMCではよくわからず、「何か大変なことでもあったのかな?」と気になっていたのですが池田さんがお茶目だったということで大事無くて何よりです。でもタイミング的に竹内さんはさぞあせったかと・・・・。
伊達には行けないのですがこの夜の大満足の演奏の数々で、きっと
楽しいライブになるでしょう、と確信しています。
どうぞ気をつけて行って来て下さいませね!
気に入って頂けて幸いでした。アレンジのし甲斐がありました!
財布事件は…そうですね…。本番中には忘れてしまっていましたが、
まあ、自分にとって、そんなに重要な事では無かったのかも
しれません(笑)。慌てたと言えば慌てましたが…(笑)。
北海道ライブ、是非とも成功させたいですね。それにはまず、
自分自身が楽しめる環境が大事なのだとも思います。それも、
今回のジョイント・ライブで、自分の心意気はバッチリなものに
なりましたので、心配は無用でしょう!…楽しんできます♪