この車両、見た事がありますでしょうか…。
自分と同じ地元の方ならよく分かるかもしれませんが(笑)、東武東上線を走る8000系という車両です。自分の生まれる前から当たり前のように走っており、特に今まで注目される事もなかったような車両です。しかし最近この車両に、俄然注目が集まってくる事になりました。
そもそもこの8000系という車両ですが、最初の車両が登場したのは1963年の事と歴史はかなり古く、そこから約20年かけて合計712両も造られました。この数は、JRを除く私鉄の中での1形式の中では最大の勢力を持っており(そもそも、幾つかの大手私鉄の全車両保有数より上です)、しかも最初の廃車が出たのは2004年の事と、本当に大事に使われた車両でもあったのでした。
約20年間も造られたので、何度も細かいマイナー・チェンジが行われています。また、装備終了後の1986年から、初期の車両には延命対策として修繕工事が行われ、これまた車両数が相当な数なので、2007年に事実上全車両に行き渡りました(事実上…というのは、その前後に廃車された車両もあるからです…)。つまりは、修繕工事自体も約20年にわたって行われたので、その内容もまたバラエティに富んだ事になっているのです。
上の写真は東武の本線である伊勢崎線の方ですが、かなり後期に修繕工事が行われたもので、同じ8000系ではあるものの、かなり印象が違っています。特に変わったのが車両の先頭部…いわゆる“顔”の部分で、窓を天地に広げて、以前よりも少し近代的な感じになりました。ただ、この“顔”の変更が行われたのは、1987年度の修繕工事以降からなので、いわゆる原型顔の編成は1986年度に行われたが唯一…というものになります。
そして、改めて一番上の写真をご覧下さい…。8000系全ての車両に修繕工事が行き届いた2007年時には、このタイプは8編成が残っていましたが、2011年現在、実はもう最初の写真の1編成しか残っていないのです。
既に製造から20年が経っていた車両に、更に20年は使えるように…と行われた修繕工事ですが、もう工事施行の1986年が25年は経っているので、車両的にはそろそろ限界がきているようにも思われます。しかし、この修繕工事が行われる前の8000系は全てこの顔のタイプのものであった為、いわゆる“東武顔”とも言われており、今やそれそ後世に伝える唯一の車両という事で、注目も浴びる事になったのです。
しかし、この東武東上線(池袋駅~小川町駅間)では、2012年度中にATC(自動列車制御装置といって、自動で列車速度を制御できる装置です)化が予定されており、この8000系ではそれに対応出来ないらしいので、活躍が見られるのは必然的にあと少しという事になってしまいました。そもそも8000系自体が東上線の池袋口では見る機会が少なくなっているので、いよいよ引退まで秒読みという感じです(東上線の小川町駅以降と、越生線では、修繕工事の後期にワンマン化改造された8000系により、まだ暫くの活躍は見込めそうです…また、場所を変えれば、例えば東武野田線は、全車が8000系で運行されています)。
あれだけ当たり前のように走っていた車両が無くなってしまうというのは、寂しさと言うか、時代の移り変わりを感じさせますが、逆に考えると、よく今まで走ってくれていた…という感もあります。折りしも、今日3月5日は東武東上線のダイヤ改正の日でもあり、まだこの日で引退という事は無いでしょうが、最後の活躍を見せてくれるダイヤだとも言えます…。今後の動向を見守っていけたらと思いますね。…久し振りに“うんちく”を語らせて頂きました(笑)。
☆東武鉄道のHP…www.tobu.co.jp/