●日時…2010年10月19日 ●路線距離…78,9km ●駅数…31駅
小海線の始発駅は、JR中央線の小淵沢駅からになります。小淵沢という駅は、市販の時刻表を見てみると、特急を含めて殆どの列車が停車するので、どんなに大きな駅かと最初は思うのですが、実際は規模は大きくなく、街もどちらかというと小ぢんまりな感じです。この駅は登山客の中継地ともなるような駅で、そのゲート的な役割を果たしている駅とも言えましょう。そんな小淵沢駅は、既に標高が881m…。ここから小海線は更に山を上って行くのですから、日本一高い所を走る路線の異名を持つのも当然とも言えますね。
この小淵沢駅、せっかくなので駅から降りて、まずは駅周辺を歩いてみる事をお勧めします。この日は天気が曇りがちでしたが、晴れの日ならば、北側に雄大な八ヶ岳を望む事ができ、この町は八ヶ岳の裾野に位置しているんだなと感じられるに違いありません。駅から5、6分も西側に向かって歩くと、すぐに市街地からは抜けられるので、気軽に訪れて頂ければと思います。
左上写真を見ても分かるように、右側に向かって傾斜になっており、その坂の先?が右上写真の八ヶ岳というわけです。実は、そんなに傾斜はなだらかでも無い…という様子がお分かり頂けるかと思います。
そして、更に小海線の線路に沿って(沿う道は無いので、回り道は必至です…)西に向かっていくと、小海線の撮影地で有名な、“小淵沢の大カーブ”に辿り着きます。ここは、甲斐駒ケ岳を始めとする、南アルプスをバックに撮影出来る有名ポイントで、小海線のポスター等を見掛ける時には、かなりの割合でここで撮られた写真は使われてるように思います。
左上のような撮影環境で、写真として撮る場合には、右上のように、思い切って望遠で狙うのが絵になるような気がします。やはりこの日は曇りがちでしたので、南アルプスの山々の全容を捉えるのは不可能でしたが、これからの季節は空気も澄んでくるので、撮りやすくなってくるでしょうね…。冬の日にリベンジでもしたいところですが…(笑)。
さて、小淵沢駅に戻り、改めて小海線の旅のスタートです。小淵沢駅を出ると、まずは中央線に沿って西に進みますが、例の大カーブで一気に逆向きに針路を変えて、今度は東へと進み始めます。その間にも列車はどんどん勾配を上っていくのですが、1駅目の甲斐小泉駅では、既に標高は1044mに達しています。そして、ここから9駅、駅名で言うと松原湖駅まで、標高の高い駅1位~9位までの駅を次々と通っていくという、正に高原路線という雰囲気で進んでいきますが、車窓に関しても独特なものがあるように思います。
やがて清里駅を抜けて暫くすると、明らかに峠を越えたような感じになる場所がありますが、そこが正にJR鉄道最高地点で、標高は1375mです。ここから急に開けて、列車の左手には八ヶ岳の全容が望める筈なのですが、やはりこの日は曇が多くて無理でした。山の裾野くらいは辛うじて分かるくらいだったのですが…。
そこから少し下り勾配になって、日本一標高の高い駅である野辺山駅に到着します。この駅は海抜1345mで、列車から降りると、流石に東京とは大分違った(笑)涼しい空気が身を包んでくれる筈です。
ここからJR鉄道最高地点を経由して、1駅戻る形になりますが、隣りの清里駅まで歩いてみました。線路の距離で5,9kmあるので、徒歩の道のりですと更に距離は掛かりそうですが、ここはハイキング気分で頑張ってみてみましょう。とりあえず鉄道最高地点までは、殆ど線路に沿って道があるので、簡単に歩ける筈です(…とは言え、30分弱は掛かるかも…)。
野辺山駅側から清里駅に向かう線路を辿ると、いったん右に曲がった後、ほぼ真っ直ぐ勾配を上っている感じになるので、いつまで歩けば良いんだ…という気分にもなってきますが(笑)、気合を入れて歩いて、中央分水界のような所に辿り着くと、JR鉄道最高地点となります。それを示す石碑なども建っていて、レストランや土産屋等もあるので、すぐに分かるでしょう。
特に、鉄道最高地点神社はなかなか粋な代物です。後ろには車輪が祀られて?いますし、賽銭箱の奥にはレールが埋められています。また、神社によくあるガラガラの部分が、枕木とレールを繋ぎ止める釘になっており、それが幾つも繋ぎ止められてあるので、なるほど、振れば確かにガラガラ(割りと高音?…笑)と鳴りました。
ここに自分は20分くらい滞在してみましたが、列車が通ったせいもあってか、どこからか車がやってきては、これらの前で記念写真を撮って帰る…といった人達が多く見受けられました。特に列車好き…という感じでもなさそうでしたから、やはり“日本一”という背景が、格好の広告塔になっているのかもしれません。
まあ、それは良いとして、せっかくなのですからもう一歩進んで、本当の鉄道最高地点を是非カメラに収めてほしいものです。…と言うのは、記念碑的に建っているモニュメントは、あくまでも“記念碑”であるので、本当の最高地点は線路上に無ければおかしいからです。勿論、線路上にそれを示す物は建ってはいるのですが、あまりに一般的ではないので、どうも見付けられていないようですね。
右上の写真の白色の標識が、JR鉄道最高地点を表すものです。ここにある踏切の、清里方向の線路脇に建てられています。この標識は、いわゆる勾配を示すもので、数字の“3”というのは千分率の値、つまり1000m進んで、3m高さが変わる勾配(‰…パーミルと読みます)を表しています。この標識は、どの鉄道路線にも建てられており、線路の勾配が変わる度に置かれている標識でもあるのです。
右上写真の表示が3‰の下り勾配(画面奥の線路が)で、その反対側は…というと、左上写真を見て頂ければ分かるように、22‰の、やはり下り坂です。つまり、ここはどちらを向いても下り坂になるポイントで、故にここが最高地点となるわけなのです。
…と、言葉で説明した感じの通り、あまり一般的ではないようですね(笑)。ただ、ここは中央分水界にもなっていて、山梨県と長野県の県境…つまりは、ここから山梨県側に降った雨は、富士川となり太平洋へ、長野県側に降った雨は千曲川、信濃川となり日本海へ…と分かれる地点でもあるのです。そう考えると自然の尊さを感じますが、とにかく、1度は訪れて頂きたい場所に変わりはありません…。車でもその雰囲気は得られると思いますので、是非♪
さて、このまま清里駅までは、ほぼ下り坂で向かえます。…とは言え、距離にして4km近くはあるので、やはり徒歩で1時間弱は掛かってしまう行程でしょうか。道は整備されているので簡単ですが、この先は線路が見えるポイントも限られるので、時間が無い方にはあまりお勧め出来ないかもしれませんね。現に、この行程の約1時間、清里駅周辺以外、歩きの人とは誰とも擦れ違いませんでしたし…(笑)。
清里駅前は1980年頃から開発が進んで、言わばミニ軽井沢?みたいな雰囲気になっていますが、ここも独特な雰囲気ではあると思います。自分は中学2年生の時の校外学習が清里だったので(学校の寮があったので…)懐かしかったですが、あの頃はゆっくりとモノを見てなかった時代でもあり、今こそ改めて、じっくり、ゆっくり見ていきたいですね。まあ、今回はまた次の機会へとなってしまったのですが…(笑)。
さて、清里駅からまた小諸方面へ向かいますが、この時に乗った車両が、実は世界初の営業用ハイブリット車両と言われる、キハE200形という車両でした。小海線は非電化路線なので、普通はディーゼルカーが走っているのですが、この車両はディーゼルエンジンとリチウム蓄電池を組み合わせ、その原動を変えながら走行する事が出来るのです。
具体的には、車両駆動(発進)時には蓄電池充電電力を利用し、加速時にディーゼルエンジンが作動します。そして減速時には電動機を発電機として利用し、減速時の運動エネルギーを電力に変換して、蓄電池に充電させるのです。確かに凄いシステムで、これらの背景ゆえ、走行音がディーゼルカーとは全く違った独特のものでした。普通はディーゼルカーの発進時というのは、エンジンを吹かさせるような音がするものなのですが、それが全くの皆無で、むしろ電車の発進時に近いものでした。また、停車している時にもアイドリング・ストップのような状況になっているので、これまたディーゼルカーに乗っている感じはしませんでした。
この車両は2007年に登場して、現在までに3両全てが小海線で活躍していて(常時2両が運用されていて、残りの1両は検査や試験等に使用…)、定期的にその姿を見る事が出来ます。大量生産にはまだまだこれからなのかもしれませんが、既に小海線ではマスコット・キャラ的な存在になっていて、小海線自身が『わくわくエコランド小海線』と明記、表示されていたりもするようです。成程、鉄道に特に興味が無い方でも、小海線に乗ってはカメラで色々と撮っていた人も多かったのですが、そういった施策が影響されているのかもしれませんね。
さて、峠を越え、千曲川を何回も横切りながら勾配を下っていくと、路線の中継駅でもある小海駅に着きます。ここからは高原路線というよりは、川に沿って走る路線…という感じで、車窓の風景も変わっていきます。小海駅は、駅数で言えば小渕沢駅から3分の1くらいまでしか来ていませんが、距離は既に6割以上は進んでいます。つまり、小海駅までの駅間は長く、これより先は短い駅間が続くという事です。その事も、列車風景の雰囲気を大きく変えているような気はします。
今度は、高岩駅から馬流駅間を歩いてみました(また1駅戻る形をとりました)。この間には写真右上のように“天狗岩”と呼ばれる岩肌の崖があり、ここも小海線を代表する有名撮影地があるからです。実際、写真を撮ってみると、正に絵に描いたような配置…。それは多くの方が写真に収めるのも頷けました…。雰囲気は素朴な感じが漂っています。
また、馬流という駅が想像以上に?集落の奥地にあり、これもなかなか面白いです。広い道には面していなく、ただ『JR馬流駅』…と書かれた看板に沿って歩いていかないと着けません。写真左上にある表示から、更に2回ほど小道を曲がっていかないと着けないので、初めて駅を訪れる方は、その表示無しでは絶対に分からないでしょうね(笑)。…ただ、時にはこんな楽しみも有りだなと思いました。
緩やかに勾配を降りて、佐久市の中心駅でもある中込駅に着くと、もはや高原路線のような雰囲気は全く無くなって、普通の地方のローカル線のような、のんびりとした感じ…また、駅間も短くなるので、地方の通勤路線のような性格も持ってくるようになります。
最後に歩いたのは、長野新幹線との交差駅、佐久平駅から、また1駅手前の岩村田駅までの、約1kmの距離でした。長野新幹線の開通(1997年)と共に出来た佐久平駅は、今までの小海線の雰囲気からすると、大都会にあるような駅で、周辺も同じ時期に開発されたのでしょう。東京のニュータウンのような雰囲気と若干被る部分があるような気がします。
前述したように、この駅では長野新幹線と乗り換えられますが、新幹線に跨って在来線の駅があるという構造は、結構珍しいのではないでしょうか。小海線のホームは1面1線という、非常にシンプルな駅になっていますが、上から新幹線を見下ろす…というのもなかなか新鮮です…。ホームから見える新幹線の方向は西南向きですが、北東側には、天気が良ければ浅間山も望めると思います。この時は何故か晴れていて、なんとか望める事が出来ました。この天気が朝から続いて入ればと、何度思った事か…(笑)。
それに比べて、佐久平駅から0,9kmの距離にある岩村田駅は、なんとか昔ながらの雰囲気を保ってもいます。ここも割りと活気のある駅で、周辺に3つの高等学校があるらしく、自分の利用した17:00頃は、下校時の学生で結構混み合っていました。確かに、ローカル線の主な客は高校生です。小海線も観光だけではなく、こんな要素があったのだと思いますが(笑)、なんか嬉しくもなる出来事でしたね。もしかしたら、自分の想像以上に色々な側面を持った路線なのかもしれません。
岩村田駅から20分弱で、終点、小諸駅に到着します。途中下車が、小淵沢駅を含めて4回行いましたが、一応1日で終われましたね。東京から日帰りの“鉄道さんぽ”では、小海線の規模を考えると、これくらいの遠さが限界かもしれません…。たまにはまた、東京から離れた土地にある路線を扱ってみたいと思います!
さて、この小諸駅。この付近の新幹線は佐久平駅を通っているので、在来線から発展してきた当駅付近は、若干肩身の狭い思いをしているような気がしてしまいます。新幹線が出来て、ここを走っていたJR信越本線という幹線路線も、しなの鉄道という第3セクター経営の鉄道会社になりました。今回の旅でも少し使ってみましたが、そう言えば、しなの鉄道に転換されてから利用したのは今回が初めてでもありましたね。昔(高校時)、この辺りの信越本線にはよく乗っていたものですが、今ではパタリと乗らなくなってしまっていたのです。恐らく、現在は新幹線で通過してしまう場所なのだからとも思いますが、小海線に乗って、また新たな魅力を再発見した事もありますし、いつかはこちらの鉄道も記事にしてみたいと思いますね。信州を走る路線は、ただでさえ景色の良い路線が沢山あるのですから…。