そもそも江差線自体がローカル線でしたが、この路線が様変わりするのは、青函トンネルが開通した事により、本州と北海道を結ぶ津軽海峡線の、北海道側の接続路線としての役割を与えられた時でしょう。電化や線路の改良工事が行われ、本州と北海道を結ぶ昼行特急の他、長距離寝台特急『北斗星』号、『トワイライトエクスプレス』号、そして長編成の貨物列車が頻繁に往来する路線になりました。その中からすると、ローカル輸送に関しては、日中は1両編成の気動車が何往復かするくらいでしたが、新幹線の開通後は、線内を走る旅客列車はこのローカル輸送のみになるでしょう(貨物列車は存続)。
もう新幹線の路盤は殆ど完成しており、後はソフト面の完成を待つばかりです。江差線で見られる色とりどりの列車を見られるのも後残り僅か…という事で、今回は遠く北海道まで足を延ばしてみたのでした。江差線内の様子の他に、北海道新幹線の暫定的な終着駅となる新函館北斗駅(現、渡島大野駅)も見てきました。周囲に何も無い所に建てられた巨大な駅は不思議な感じではありましたが、開業まであと3ヶ月というところです。この付近の鉄道事情も大きく変わる筈であり、恐らく最後になるであろう江差線の現在の状況を見るのは、とても大きな意味があると思ったものでした。…もう既に冬景色となっていた函館ですが、さんぽ時は概ね好天にも恵まれました。それでは御覧頂ければと思います!
●日時…2015年12月7日 ●距離…37,8km ●駅数…12駅
場所が場所だけに、函館には前日入りを果たしていましたが、当日の朝を迎える前に、深夜の訪問列車をカメラに収めるという目的もありました。…という事で、深夜1:00頃に函館駅で迎えた列車というのが、夜行急行『はまなす』号です。
青森駅〜札幌駅間を青函トンネル経由で結ぶこの列車は、現在JRで唯一の定期急行列車でもあり、数少ない夜行列車の1つでもあります。機関車が客車を牽引するという、鉄道発祥の頃は当たり前だったスタイルも既に貴重なものとなっており、正に現代に生きる夜汽車に相応しい列車とも言えましょう。車両はかなり年季が入っており、寒さの厳しい北の大地で走り続けた貫禄をも感じさせてくれました。
この列車、自分には馴染みが深く、安く青森〜札幌間を、それでいて夜行時間帯で効率良く移動する事が出来るので、かつて演奏ツアー時に往復で利用した事があったくらいでした〔竹内大輔の写真日記(〜2009)、Generation Gap & The Linda カップリング・ツアー、北海道編(2007.9.13~9.17)参照〕。…とは言え東京から鈍行で丸1日かかって青森駅まで来て、更に夜行列車で札幌駅まで…という行程は身体には堪え、流石に今の自分では出来ないかも…と思いつつ、駅に停車している列車を見ては当時を懐かしんだりしたものでした。これも、新幹線開通時には廃止が決まっています。後少しの間、無事に走り続けてくれたらと思います。
…夜を明かし、今度は朝一番となる江差線の列車に乗る為に再度函館駅にやってきましたが、ここでもう1つ撮っておきたい列車があります。それが、恐らく御存知の方も多いと思われる、寝台特急『カシオペア』号です。
『はまなす』と違って歴史は新しく、1999年に豪華寝台列車として登場し、1編成のみが造られた為に1週間に上野駅〜札幌駅を3往復するスケジュールが与えられ、瞬く間に人気列車に躍り出た列車です。まだまだ走れる筈ですが、やはり新幹線開通と同時に廃止になる運命にありまして(この車両を使って、別列車の設定が検討されています)、これもまた貴重な写真となる事でしょう。
このように、まず江差線を語る上で大事なのは、本州と北海道を結ぶ路線…という役割が与えられている事で、それ故に『北斗星』号や『トワイライトエクスプレス』号という寝台特急も、かつてはこの路線を頻繁に走っていた事を忘れてはならないのです。これらの列車も既に廃止されてしまい、『はまなす』号や『カシオペア』号が最後の砦だったわけですが、函館への新幹線開通後は、青函トンネルは貨物列車を除いて、基本的には新幹線車両しか走らせない予定でいるので、ここで思い切った改革が進んでしまいそうです。新幹線ではなく、在来線が本州と北海道を結んでいたという事実を、今回は特に味わう必要がありそうです。
さて、長くなりましたが、江差線の普通列車に行き、現在の終点である木古内駅までまずは向かいましょう。そこから函館方面に折り返していう形で、今回の“さんぽ”を始めていきたいと思います。木古内駅は既に新幹線の駅が姿を見せており、今後、本州方面へはここでの乗り換えが余儀なくされます。急に巨大で近代的な駅舎が出てきてビックリしてしまいますが、今後はこちらが日常の光景となりそうです。
前述通り、昔は更に江差方面に線路が伸びていましたが、2014年5月12日にその区間は廃止になってしまいました。現在はこの先は、津軽海峡線として青函トンネル方面に線路を伸ばすだけですが、それも新幹線に取って替わられます(…貨物列車は継続するので、線路も一応は繋がったままになる筈です)。…色々な思いが交錯してしまいますが、早速江差線の鈍行列車での“さんぽ”に入りましょう。この路線、日中は青森駅〜函館駅を結ぶ特急『スーパー白鳥』号、特急『白鳥』号等も行き交ってますが、江差線内での途中駅は起終点を除いて停車しないので、今回利用する列車は鈍行列車のみという事になりそうです。
鈍行列車に使われるのは、JRグループ全域で使われる一般型ディーゼル車両キハ40系…。国鉄時代に造られた車両で、その中でもJR北海道のキハ40系は窓が2重になっている等の、北海道仕様の車両となっているのが特徴です。車内は典型的なボックスシートですが、今やこちらも珍しい存在かもしれませんね。所謂“汽車旅”…というのが連想出来そうな雰囲気を醸し出しています。
木古内駅から2駅乗って、泉沢駅へ…。こちらは1両編成ですが、やはり本州と北海道を結ぶルートだと感じさせるのが、長大貨物列車の存在でしょう。鈍行列車に比べれば遥かに列車の本数が多いので、ここでの存在感は大きいものがあります。また、特急列車も軽やかに通過しているのを見ると、今まで乗ってきた列車が1両編成だったのは俄には信じられない気持ちになりますが(笑)、改めて、鈍行列車の利用者減の実態を感じさせてもくれますね…。
この先、列車は海外線に沿ったルートを走り、天気が良いと函館湾の海越しに函館山も臨めるのですが、なかなか函館には近付きません…。丁寧に湾に沿って、ぐるっと半周するような形で函館方面に進むので、暫くは海越しに函館山が見えるような景色が続くのです。当然、江差線からの車窓ハイライトもこの付近なのですが、何ぶんこの区間の鈍行列車の本数が少なく(現在、1日9往復)、“さんぽ”をするにもなかなか大変ではあります(笑)。ここでは路線バスの力も借りつつ、釜谷駅〜渡島当別駅間を“さんぽ”してみました。
釜谷駅舎は、貨物のコンテナを再利用したものとなっており、JR北海道のローカル駅では結構目にします。ここでは、1度列車を見逃してしまうと、次は2時間、3時間後…とかになってしまうので、列車1本1本が貴重です。駅に着くと、2、3人の乗り降りがあるような状況が続いている感じでした。
殆ど国道228号線と並行していますが、早速函館山も見えました(左上写真参照)。東京からずっと列車旅をしててこの区間に差し掛かると、北海道に入ったという実感が強く湧いた事を覚えています。ここを走る昼行特急列車は、殆どがJR北海道車両が担当する『スーパー白鳥』号となりますが、1日2往復のみ、JR東日本485系が担当する特急『白鳥』号も足を延ばします(右上写真参照)。これは本州で活躍する電車が北海道に定期的に乗り入れるという貴重な例でもありましょう。繰り返しになりますが、新幹線開通後のこういった例は、新幹線と貨物列車を除くと皆無となります。
それにしても雄大な景色です。北海道らしい…というのとはまた異なり、函館らしい景色とでも言うのでしょうか。真っすぐな地平線が伸びてという感じではないのですが、荒々しい海と、そこに切り立った丘に列車が走っているという風景は、やはりどこか遠くに来たという旅情が感じられます。今では特急列車も頻繁に走りますが、今後はローカル列車のみが走るという事で、かなりのんびりとした路線になるのではないでしょうか…。運行継続される貨物列車の存在が尚更際立ちそうな感じもします。
渡島当別駅は、可愛らしい駅舎を持った駅でもありました。この駅の近くにトラピスト修道院があり、その最寄りの駅にもなるという事から造られたそうです。郵便局との合築の建物でもありますが、終日無人駅となっています。駅の函館方にはトンネルがあり、トンネル内で上下線の分岐が行われています。これは、江差線が津軽海峡線の一部として使用するに辺り、貨物列車等の待避を考慮して、駅構内の有効長を拡大する工事が行われた為のものです。
この先、茂辺地駅、上磯駅と続きます。上磯駅から函館方面は住宅街が続き、鈍行列車の本数も倍になり、概ね1時間に1本程となります。駅間も短めに設定され、ここから起点駅の五稜郭駅まで5駅で 8,8km という距離ですが、先程の茂辺地駅から上磯駅までの距離もまた、8,8km というものだったりします。
駅間も短いので、上磯駅〜清川口駅〜久根別駅と、2駅分“さんぽ”してみましょう。住宅街や工場が多い中を走るので、先程の雄大さ溢れる景色とは違った世界のようですが、これはこれで地元密着型の雰囲気も醸し出していて興味深いですね。この2つの駅間をまたがっても、距離的には 2.3km というものでした。
キハ40系は非力なので加速に時間が掛かり、この2駅間でも6分程掛かります。加えて単線であるが故、途中の駅での列車交換待ちや特急列車等の待避もあったりするので、上磯駅から五稜郭駅まででも20分以上掛かる事はしばしばで、その遅さが乗客離れの一因にもなっているのは否めません…。第3セクター化を切っ掛けに、鈍行列車の電車化を検討してスピードアップを図っても良いと思うのですが、財政的にも厳しい部分があるのでしょう。ひとまずはキハ40系を譲り受け、現状で推移していくようです。特急列車は全て新幹線に替わるので、その分の待避時間は少なくなりそうですが、今後の路線の発展の為にも、近代化は避けて通れないかもしれませんね。ちなみに現在の特急列車は、この区間を5、6分程で駆け抜けていきます。
さて、JR函館本線と合流して、そろそろ起点の五稜郭駅に到着します。江差線の列車は全て函館本線に乗り入れて、この先の函館駅まで足を延ばしていますが、江差線としての起点は五稜郭駅なので、今回の“さんぽ”もここまでとなります。五稜郭駅から木古内方向を見ると、左奥に向かう方が江差線という事になります(右下写真参照)。右奥に向かう路線は、前述の函館本線の長万部、札幌方面となります。
五稜郭駅構内は広く、貨物列車も多く見掛けます。この近くの函館貨物駅が本州と北海道を結ぶ貨物列車の拠点、スイッチバック駅ともなっている為で、これは新幹線開通後も変わらず賑わう事でしょう。札幌方面へ向かう優等列車、特急『スーパー北斗』号の姿も見かけ、ここからは道内列車の性格が強くなり、JR北海道エリアの雰囲気の本領発揮!とでも申しましょうか…。
これでJR江差線の“さんぽ”は終わりとなりますが、前述通り、せっかくなので今後の北海道新幹線の開通後に、函館の拠点駅となる駅を見ておきたいと思います。それが、函館駅から5駅札幌方向に進んだ(五稜郭駅からは4駅先)、渡島大野駅という場所です。
渡島大野駅は現在、普通列車のみが停車する小さな駅です。そもそも列車本数は少なめではありますが、この区間は、函館本線の迂回路線である藤城支線と並行区間にもある為、普通列車の本数も更に少なめで、1日に上下併せて20本程度の列車が停車するくらいです。そんな場所が新幹線の停車駅に選ばれたのは、北海道新幹線は函館が終着ではなく、この先の札幌駅まで目指して造られている為で、真っすぐに札幌を目指すには、現在の函館駅の位置ではスイッチバックを要する等、非常に遠回りになってしまうからです(そもそも、市街地の中に新幹線を通すのも難しいかもしれません)。
そんなわけで、広い空間のあるこの場所が選ばれたわけですが、昔の渡島大野駅の雰囲気からすると大変貌も良いところで、急激な出世を遂げたとでも言いましょうか。とにかく、激しい変化がこの場所には起きていたのでした。もう、駅は外観を含め、大まかな部分は完成しており、いつ新幹線車両が来てもおかしくない状態になってはいました。雪が積もっていたので、駅前の整備された様子は若干分かりにくかったのですが、恐らく綺麗に、そして整然とされた風景が広がっているのだと思います。駅から離れ、札幌方向に進んでみると、新幹線の高架橋はこの先でひとまず断たれていました。右下写真は、隣りを走る函館本線の線路をオーバークロスする車道からのもので、更に新幹線が延伸された時に、この道路の処遇はどうなるのかも少し気になるところでした…。
この道路から札幌方向を臨むと、大沼方面へ上り勾配で進んでいく線路が見えます。…そう、ここから先は函館本線は山越えの区間が、北海道新幹線はこの山を長大トンネルでぶち抜くかもしれなく(大沼駅や森駅は経由しない)、とにかく札幌に速く到達させようという理念が感じられそうです。
北海道新幹線の札幌駅までの開通は、今のところ2031年の春が予定されており、その時の東京駅〜札幌駅間の所要時間は5時間1分との事です。現在の東京駅〜福岡駅間の所要時間と殆ど変わらないので、新幹線で札幌に行こうとする需要も見込めそうではありますね。まだまだ先の話しですが、動向を注意深く見守っていきたいと思います。…というより、まずは函館までの開通ですね。新駅は渡島大野駅…ではなく、新函館北斗駅という名前に生まれ変わります。道内の鉄道体系にも変化が出てくる事でしょう。また変化した函館にも、今度は新幹線で訪れたいものですね。その時は第3セクター化された後の江差線(➡道南いさりび鉄道…という鉄道会社になります)にも注目してみたいものです!
☆北海道新幹線スペシャルサイト…http://hokkaido-shinkansen.com/
☆道南いさりび鉄道のHP…http://www.shr-isaribi.jp/