この日は自分達も含めて5組の出演者がいて、自分達は4番目…。それなりのペースが必要になってきますが、トップバッターの臼井淳一さんから既に、その濃い勢いを飛ばしている感じでした(笑)。バイオリンを弾きながら歌うスタイル…いや、逆に、歌いながらバイオリンを弾くスタイル…なのかもしれませんが、時折叫び声や呻き声?に近い声を発しながら、バイオリンでそのフレーズを追っていったりと、かなりのフリースタイルなものの、どこかに音の秩序も見受けられる気がしてしまいます。ずっと聴いていると、どこからが声でどこからがバイオリンの音なのかが分からなくなるくらいでしたが、バイオリンの奏法といい、かなり特殊なステージではありました。しかし、MCになると途端に腰が低くなるというのに、どこか自分はホッとさせられましたが…(笑)。
そして2番手には鼎(てい)というバンド(左上写真参照)で、このバンドのベーシストが偶然にも自分の大学時代の後輩で、久し振りに演奏している姿を見させて頂きました。しかしよく見るとこのバンド、3人皆全員が低音楽器担当ではないですか…。しかも、それぞれが和太鼓とディジュリドゥという楽器編成だったので、かなり特殊なサウンドを追求しているのは明らかでした。しかもいざ聴いてみると、最初はその低音の多さに驚かされたものの、この低音サウンドが徐々に心地良くなってくるのです。気付くとベースが一番高い音を鳴らしていたりと(笑)、ベースという楽器の懐の広さに共感したと言いますか、民族感も出しつつ、心地良いリズムも出しつつ、低音楽器同士の協調を感じさせられて良かったです。
3番手にはシンガーソングライターの青木マリさんという方(右上写真参照)で、今回は自らがエレキギターを弾き、ベーシストの方とのデュオ編成での出演となっていました。歌の実力は勿論で、見た目的にロックやパンクを感じさせるものの、ブルース・フィーリング等の要素も感じられるところがあり、恐らくどんなジャンルでもこなせるような貫禄がそこにはありました。今回は前述の要素を匂わせる曲調が多かったですが、異なった状況に身を置いても個性は消えない方だと思います。じっくりと聴かせて頂きました。
そうして自分達の出番になりました。ここまで、個性豊かな面々が揃っての出演となっていましたが、それに比べると自分達の編成はボーカル、ピアノ、ベースと、本当にシンプルな編成となっています。しかしここは鹿嶋さん独特の世界観が健在であり、歌声を発した瞬間に、既にこの空間を自分のステージと変えてしまうのです。
トリオという編成でしたが、前回と同じようにボーカル+ベース、ボーカル+ピアノという、それぞれのデュオ曲もお送りしました。特に個々同士が近付ける場面であり、時にお互いが寄り添い、時に離れ、音楽の緊張を楽しみます。1つ1つの選曲からその歌詞の選定まで、鹿嶋さんが歌を歌う時に心掛けている事全てが、お店中に広がっていくのが分かります。自分もその瞬間を見逃すまいと、ピアノでその音を全面的にサポートします。
時間的には30分のステージでしたが、全てを出し切った感覚がそこにはありました。正直、前回のトリオ編成でのライブでは、お互いに探りながら演奏していた感じもあり、まだまだ課題は残っていると思っていたものでしたが、今回でその課題はひとまずのクリアが達成されたのではないでしょうか…。これは当日の即興的な演奏よりも、事前に丹念に準備していた努力そのものだと思います。そしてメンバー1人1人が消化する事ができ、成功へと導けたのです。良き時間を、ありがとうございました。
そして、この日のトリとなった5番手のバンドを、ついに紹介する時がやってきました。そのバンド名は Uchronie(ユークロニー)という、なんとフランス発のバンドです。既に上の写真で不思議な事になっていますが(笑)、この方達は、自分達がステージに立っている時に既にこの格好でスタンバイしており、その時点で何かヤバそうな気配は感じていたのが的中してしまいました。ひとまず、案内として説明されていたのが、、、
『彼らのグループ名のユークロニーとは「時」を神格化した神・クロノスに由来し、
「いつもの時ではない」「時の枠外」といった意味です。そして彼らは自身の音楽を
「シャンソン・ロック・ソシオ・ポエティキ(社会詩的なロックソング)」と命名して
います。今この瞬間に起こりそうにないこと、つまり昨日と明日の間といった時間の
外側を表現しているそうです。ユークロニーはフランス文化を体現しつつ、世界に
普遍のメッセージやスタイルを追い求め、枠に囚われない発想で自らを自由に
表現します。彼らはその歌詞に、詩的な部分と社会との関わりとの両者を込めて
います。例えばエクリ・モア(私を書きとめて)」はアメリカ同時多発テロ事件に
ついて、「チャンス」は登録されていない、法律上の地位がない外国人について、
そして「レルー(オオカミ)」は狂気と不寛容について表現しています。』
…という事でした。そのステージは、確かに枠に囚われない発想で自らを自由に表現している感じで(笑)、更にお客さんをステージに上げてパフォーマンスに組み込ませてしまうくらいでしたが、歌詞が殆どフランス語だったので分からず、それでも時折聞こえてくる意味不明な日本語が、更に自分を不安感へと誘わせてくれました。
とにかく、全力でパフォーマンスにぶつかっていく…。そのパワーは頂きました(笑)。そのパワーを賞賛し、CDをゲット(サインも頂きました…笑)。彼等を知るには、これを聞き込むしか無いようです…。しかし、同時に頂いた日本ツアーのフライヤーのスケジュールを見ると、なんとツアー期間であるこの6月に全27本のライブを入れているではないですか!…しかも、現在は東京ツアー中で、東京だけで10本以上ものライブが毎日のように組まれていたのです。「今月、今回で最後から7本目のライブね…。」と言っていた言葉が忘れられません(この日は6月22日…笑)。スケジュール自体がクレイジーだった Uchronie…。衝撃の1日を過ごさせて頂きました。
☆鹿嶋敏行さんのブログ…http://blogs.yahoo.co.jp/kajimarl_to_the_world
☆池袋鈴ん小屋のHP…www.ringoya.org/
日本人のサポートトランペットの方(?)に客席で「アーティスト
が、きっとあなたを抱きしめますよ」(!)的なお話をしていただ
いてたことで、ユークロニーのステージの雰囲気を想像するしかな
いですね。そして、さまざまな理想の表現を追求できる場としての
、池袋鈴ん小屋さん、とても貴重な場所だな、って行くたびに思うのです。
濃い濃いみなさまの中での鹿嶋敏行Trio、演奏中はすべてを塗り替
えてしまって、まばたきの一瞬のように、あっと言う間に素晴らし
い時間が過ぎていきました。鹿嶋さんが布を赤ちゃんに見立てて抱
きしめているような写真がありますが、この時の歌が特に自分は世
界に没頭できて好きです。
心構えは出来ていたつもりでしたが、それを遥かに上回る
パフォーマンスにやられてしまいました(笑)。インパクトは
かなりのものだったのですが、鹿嶋さんのステージは、そんな
ユークロニーのメンバーからも一目置かれていた感じでしたし、
こちらも一応の軌跡は残せたのではないかと思います!