5月5日(1日目)
この日は『Bloom』というタイトルが付けられたイベントが開催されており、TRI4TH はその中でもメインのステージを担う役割をなっていました。町屋らしい建物が幾つもある中での一棟の中にステージが造られており、畳の上で行われるクラブジャズライブ…というのも面白い状況だなと思いました。勿論、DJブースも用意されており、ガンガンに音楽を掛けていくのです。一瞬、現実的な雰囲気ではなくなりますが、部屋の外を見ると、そこには静寂が広がっており、このアンバランスさがまた魅力的なようにも思えました。
リハーサルの後には少しだけ周囲を見学させて貰いましたが、イベントが始まるとドリンクやらフードやらが提供されてくるので、ついついお酒を飲んでまったりとしてしまいます(笑)。今回は楽屋もその町屋内で用意して頂いたので、そこに居ても十分に風情は楽しめるのでした。この日はゴールデンウイークの最中での移動となっていた事もあり、かなり早めに東京を出発した分、本番前には身体を休めたいところでもあったのでした。
そして陽も暮れる頃、TRI4TH のライブ準備へと入ります。クローズが 21:00 頃に設定されていたので、いつもより少し早めのスタートではありましたが、良い雰囲気の時間でもあったと思います。今回の企画者であり、自分達を呼んで頂いた方でもあるDJシンスケさんからの紹介と共に、自分達の演奏は幕を開けたのでした!
自分達のステージは、客席より1段だけ高い位置にはあるのですが、お互いが畳の上という環境は、なかなか他では味わえるものでもないでしょう。自分達も、そんな新鮮味のある環境を楽しみつつ演奏をしていった感じがありました。夜の町屋群に、管楽器とリズム楽器の音の洪水が響き渡ります。
今回は1時間という時間が用意されており、TRI4TH の魅力ある楽曲をたっぷりとお届け出来たのではないかと思います。3rd.CDアルバムからは勿論、2nd. CDアルバムからの曲を割りと多めにお送りしました。また、ジャズ・スタンダード曲である“Night In Tunisia”も TRI4TH 流のアゲアゲ?アレンジでお送りし、会場内を一気に温めていきました。
そんな中でも、やはりサックスとピアノのデュオである“Circle”は喜ばれました。夜の町屋という情景と、非常にマッチしていたようにも思います。周りをよく見ると、ここは建物の外からもステージは見えるようになっているのですが、その外からも飲み物を傾けながら見てくれていたお客さんも多かったようで、正にこのエリア一帯で作り上げられていたステージになっていたような気がしました。雰囲気が本当に抜群でした!
そして、後半に向けて更にテンションを上げていきます。こちらもジャズ・スタンダード曲のカバーで“Moanin'”と、いつもはライブ前半でお送りしている“Volare Via”を本編の最後に演奏していきました。勿論これでは終わらず、アンコールで“Dance 'em All”に突入し、最後の大暴れをさせて頂きました(笑)。こちらもまた盛り上がり、このイベントの良い締め括りになった気がしました。
…1時間なんて、本当にあっという間でした。全体的に静かな雰囲気もありましたが、やはり盛り上がるところでは盛り上がって、お客さんと一緒になれた時間が過ごせました。イベント全体の雰囲気も個人的に好きな感じで、やはり“和”というものはジャズに合うのかもしれません。ジャズ自体が色々な音楽や文化との融合だと言われますが、そこに和を組み入れても、不思議に溶け込んでしまう…。その心地良さを改めて実感出来た1日になりました。どうもありがとうございました!
さて、メンバーはこのまま夜通しで東京に向かいましたが、前述のように自分はここ近江八幡で1泊し、次の日の鉄道巡りに進みたいと思います(笑)。自分的には、まだまだ旅は終わっていないのでした♪
5月6日(2日目)
昨日の疲れもありましたが、この日は朝7:30にはホテルを出発しました。鉄道巡りに費やせる時間は限りがある事を考えると、早く行動に移すのがベストなのです。今回の鉄道巡りのテーマですが、現在いる滋賀県の鉄道に乗る…というもので、具体的には近江鉄道という私鉄を軸に、色々と回ってみようかと考えています。
近江鉄道はその名の通り、滋賀県東部に勢力を持つ鉄道会社で、まだ自分は1度も乗った事の無い路線でした。この土地の人には申し訳ないのですが、近江地方というのは、どうしても東京から関西へ向かう時に通過をしてしまう地域で、東海道新幹線からもその風景を何度も見ているのに関わらず、立ち寄る事は現在まで出来ていませんでした。そんな中、今回のように近江八幡でライブを出来たというのも、良い巡り合わせだったのでしょう。このチャンスを逃すまいと、近江鉄道の全線制覇を目指し、早起きした次第でした。
近江鉄道は戦後一貫して西武グループの会社(西武鉄道の子会社です)で、その車両は西武鉄道の中古車両を種車とする改造車両が殆どです。それは現在でも変わらなく、近江鉄道の新車である100形電車(右上写真の中央の車両)は最近まで西武鉄道で活躍していた、元西武鉄道の新101系電車なのです。まずはスタート駅の近江八幡駅から八日市駅に向かい、近江鉄道の本線に到達します。実は近江鉄道は本線の他に2つの支線から成り立っており、この近江八幡駅〜八日市駅間は、八日市線という支線路線なのでした。
鉄道巡りは、支線が多い程、その制覇には時間を要します。特に、その支線が盲腸線(終点から先に接続する鉄道線が無い路線)であれば、1度来た道を引き返してこなければならない為、何となく非効率的な感じがしてしまうでしょう。近江鉄道の場合、本線が支線に比べて長い距離を走り、終点の貴生川駅こそ、他の路線との接続駅ではあるものの、まだ制覇していない部分を乗るべく、再度引き返すのは効率が悪いと感じました。これで列車の本数が多ければまだ良いのですが、近江鉄道は八日市線を除くと1時間に1本ほどの運転本数しか無いので、スケジュールにも制約が出てきてしまいます。自分は貴生川駅に着くと、いったん近江鉄道とは離れ、違う鉄道路線の場所へと向かいました。
貴生川駅までの行程はのんびりとしたもので、地方ローカル私鉄の醍醐味のような時間を経験させて貰いましたが、貴生川駅からのJR草津線は、やはり少し近郊路線的な性格のある雰囲気がありました。ちなみに、貴生川駅からは信楽高原鐵道という第3セクターの路線が出ており、この路線も自分はまだ乗った事が無かったのですが、2013年の9月に起きた台風の影響で、路線の一部の橋脚が流失…、被害は甚大なもので、この時点で未だに復旧の目処が立っていない状況だったのでした。
復旧の目処が立っていないながらもホームに佇む車両や、代行バス乗り場の存在が、今の状況を鮮明に映し出していて歯がゆかったですが、2014年11月29日に、実に運休になってから1年1ヶ月振りに運行を再開したようです。これは、また機会を見付けて乗りにいかなくてはなりませんね…(笑)。
JR線を乗り継ぎ、石山駅で京阪電鉄石山坂本(いしやまさかもと)線に乗り換えます。この路線の一部区間もまだ乗った事がありませんでした。滋賀県の大津市を中心とした路線展開をしている路線で、本家の京阪電鉄とは車両の大きさもミニサイズで、京阪の路面電車バージョンのような印象を受けます。ここまでくると列車本数も多く、基本的には15分毎の運転で、区間によってはその運転本数が倍になります。
路面電車のような風情ですが、道路との併用軌道になる区間は少なく、やはり普通の鉄道路線だと思わせます。ただ、京阪京津(けいしん)線との接続駅である浜大津駅付近は、接続先の京津線を含めて併用軌道区間が続くところでもあり、京津線は特例の4両編成(左下写真参照)なので、道路を走る車との迫力ある離合シーンが毎日のように展開されている場所でもあります。今回はちょっとしか寄れませんでしたが、いつかゆっくりとその光景を眺めてたいものです。
石山坂本線に乗ってそのまま進み、湖南地方から湖西地方へと移動してきたところで、終点の坂本駅になります。比叡山延暦寺へ向かうケーブルカーへの最寄りの駅でもあり、日吉大社の門前町として古くから栄えた坂本の町に位置する駅です。坂本は重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、観光地でもある為か、坂本駅の駅舎もそれは立派なものでした。
さて、坂本駅自体には接続路線はありませんが、ここから徒歩10分程のところにJR湖西線の比叡山坂本駅が存在し、そこから乗り継いで再度近江八幡駅に向かいました。近江鉄道の残りの路線を制覇する為でもあります。朝からここまでのルート選定にはだいぶ悩みましたが(先に近江鉄道の全線を制覇した方が良いのか…等々)、結果的には今回の行程が良かったように思います。最優先の目的であった近江鉄道の、朝の慌ただしい側面と、昼間の長閑な側面の、両方を体験出来る事になったからです。
改めて近江八幡駅から乗ったのは700形という、近江鉄道開業100周年を記念して登場した車両でした。種車はやはり元西武鉄道なものの、イベント等にも使用出来るようにと、車内は転換クロスシートが装備され、室内灯カバーも付けられ、何より外観も特徴的なので、一見しては元西武鉄道の車両とは分からないかもしれません。ここに、一私鉄であるプライドが感じられるというものです。
割りと快適な車内だったので、このまま乗っていたくなりますが(笑)、もう1つの支線に寄らなければなりません。それは本線の高宮駅から出ている多賀線で、終点の多賀大社前駅(左上写真参照)まで2、5kmしかない路線なのですが、短いからといって無視するわけにもいかないので(笑)、きっちりと乗らせて頂きました。この短い路線の中間駅は1駅だけですが、それがスクリーン駅という、少し不思議な駅名となっています。この駅は SCREEN ホールディングス彦根事業所の敷地内に存在し、従業員の通勤の利便性を目的に近江鉄道へ要望、2008年3月に開業したとの事でした。比較的新しい駅ですが、1914年に多賀大社への参詣路線とした開通した多賀線の新駅…と考えると、時代の流れを感じずにはいられないですね…。
本線に戻り、最後の未乗区間へと入ります。途中の、車両基地及び近江鉄道ミュージアムのある彦根駅(左上写真参照)では近江鉄道の車両が勢揃いしており、ライオンズカラーや黄色の車体から、改めて西武グループの鉄道なのだと感じさせてくれます。そして、列車は終点(路線的には起点駅)の米原駅へ。これで近江鉄道の全線制覇を終えた事となりました。この時点で時刻は15:30…。良いペースですが、これから東京に戻らなければならない事を考えると、まだまだ急ぐ必要はありそうでした。
米原駅は滋賀県唯一の東海道新幹線の駅でもあり、『のぞみ』号は全列車が通過するものの、毎時1本の『ひかり』号は停車するので、このままダイレクトに東京に帰る事は可能でした。しかし、これだとまだ時間的に早いのと(笑)、この時はゴールデンウイーク真っ只中で、指定席はどの列車も満席状態。…とは言え、全て在来線で帰るというのも時間的に厳しいという事情もあったので、新幹線でひとまず名古屋駅まで移動し、そこから在来線で東京に向かうという行程をとりました。新幹線の待ち時間を利用して、高速で通過していく撮影に挑む時間もまた楽しいもので、こちらもあっという間に時間は過ぎてしまいました。
名古屋駅で降りて、きしめんを搔き込み(笑)、在来線に乗り継ぎます。東海道新幹線利用ですと、ここから東京までは1時間40分程ですが、在来線を乗り継いだ時の所要時間は約7時間であり、この時点で16:30ぐらいだった事を考えると、名古屋駅発はもう最終電車に近い状況である事は言うまでもありません(笑)。ここからは東海道本線の東京方面への、最終電車の乗り継ぎのイメージで進んでいきました。
豊橋、浜松、静岡、富士と乗り継ぎ、ようやく熱海駅からJR東日本のエリアに入った時には辺りは完全に夜の状態でした…。そして途中の国府津駅で湘南新宿ラインの列車に乗り継ぐ事ができ、無事に帰宅の身になれたわけです。最後には奮発してグリーン車に乗り、ビールとお摘みの時間を楽しませて頂きました。
予想通り、ライブレポートより鉄道巡りのレポートの方が長くなってしまいましたが(笑)、近江八幡という場所で演奏させて貰えた切っ掛けから発展出来た、非常に充実した旅にもなりました。勿論、鉄道だけを目的とした旅も好きなのですが、こうした切っ掛けから考える鉄道巡りもまた好きなのだと、改めて思いました。今後も色々な場所で演奏出来る事を楽しみに、鉄道の旅も考えていきます(笑)。そして近江八幡の皆様、どうもありがとうございました!
☆TRI4TH のHP…http://www.tri4th.com
☆近江八幡 Lai Cafe の(食べログの)HP
…http://tabelog.com/shiga/A2503/A250301/25004749/
☆近江鉄道のHP…http://www.ohmitetudo.co.jp/railway/