以前にもお伝えしたように、今回は写真家の市橋織江さんとのコラボレーションにより、そのCDジャケットの写真、ブックレットの構成が決まりました。ヨーロッパの何気ない街並みの写真なのに、どうしてこんなに惹き付けられるのでしょう…。これらの写真と自分達の音楽と合わせて、正にこのCDで旅に出ているような感覚になると思います。改めまして、販促動画を御覧頂きたいと思います。
さて、今回のアルバムは全て自分のオリジナル曲となっているのですが、せっかくですので、前回のアルバムである 3rd.CD『ReInterpret the Passage』の時にも書かせて頂いた、曲解説〔『ReInterpret the passage』CD、曲解説参照〕というのを行ってみたいと思います。今までのライブで数多くやってきたものから、今回の為に書き下ろした新作、そして昔の曲から掘り起こしてきた?曲まで、全部で12曲あります。オリジナル曲を解説するというのは、初めてそれらの曲を聴く方にとっては既知感を与えてしまうので、良くも悪くも…という部分はあるのですが、それらも踏まえた上で書いていると思って頂ければ幸いです。あくまでも参考程度に見て頂けたらと思います。それではどうぞ御覧下さい。
1、Overseas
1曲目に収録させた“Overseas”は旅の始まりを予感させるもので、これから
外に向けた不安な思いや期待感をギュッと凝縮させて表現してみました。
冒頭のフレーズをモチーフに、色々なハーモニーで曲調を展開させていくと
いうのは、反復ではあるものの、様々な形が見られる海辺の波を想像させて
くれるものになるかもしれません。この曲から「旅」は始まり、この作品の
タイトルである『Voyaging』も、この曲の影響を受けて思い付いたものでした。
2、The Outside Yellow Lamp
海外で初めて訪れる街に夕方頃に着くと、空港から街までの移動の間に大体は
日が暮れてしまいます。普段見られない街並みに目にする明かりは、若干淡く
オレンジ色に輝くナトリウム灯。有機的に配列されたそのナトリウム灯の列は
とても印象的で、それが初日の街のイメージにもなるくらいです。時間的には
夜で、この次の日から始まる現地での体験を素敵なものにしてくれる事でしょう。
3、Late Sunrise
冬のヨーロッパは日の出が遅く、自分が訪れた街では8:00を過ぎて、ようやく
太陽が地面を照らし始めた…という感じだったでしょうか。しかし人の動きは
それよりも早く始まっており、空の様子は早朝を連想させられるも、鉄道は
混雑し、街の動きは慌ただしいです…。これも1つのヨーロッパらしい風景
なのだと思い、幻想的と激動の双方を1つの曲に取り入れてみました。
4、The Night Visitor
自分の曲の中では珍しい、ベースをフィーチャーさせた曲です。ベースの
高音部分で奏でたメロディは、後にピアノで重ねてハーモニーも作り出し、
更に異なったセクションへと展開されていきます。タイトル通り、深夜の
怪しげな雰囲気と、その中での遊び心を探しなら聴いて頂けたらと思います。
5、Less is More
今回の作品で初お披露目となる曲で、今回のアルバムの為に作った曲でもあります。
故に『Voyaging』の中では最も新しい曲となっているのですが、作曲の切っ掛けは
このアルバムの全体的なバランスを保つという考えによるものです。今回の作品を
俯瞰してみると、やはり静けさやメロディアスな側面が軸となっているでしょう。
しかし、そこに自分は何かしらのスパイスを入れたいと思いました。その答えが
この“Less is More”であり、変拍子であり、ソロもドラムがメインとなっていると
いう構成なのです。『Voyaging』では異質の1曲かもしれませんが、必聴です!
6、Montmartre's Cafe
フランスのパリに位置するモンマルトル。小高い丘を形成したエリアで、ここでは
偉大な芸術家が何人も誕生し、そして暮らしていった場所でもあります。この街は
新旧の歴史が織り混ざった独特な雰囲気があり、歩いているだけで芸術の片隅に
触れられる事と思います。映画『アメリ』の舞台でもあり、自分も大好きな街の
うちの1つですが、この曲が作られたのは2008年の秋頃で、実はトリオの
1st. CDアルバム『Pictures』を発売した頃には既に出来上がっていたのです。
しかし、当初はこのような曲調の曲を大事に表現するのが難しく、その後は思考を
凝らし、今回のアルバムでついに収録が実現されたのでした。敢えて目新しい事は
せず、淡々とした楽曲が何故か心地良いという、良い雰囲気に仕上がったと思います。
7、La Grande Roue de la Concorde
パリのコンコルド広場の大観覧車を意味する“La Grande Roue de la Concorde”。
移動式の観覧車で、期間限定でその姿を現してくれるものですが、初めて見た
時にはその回転する速度の速さに驚かされ、ゆったりと景色を眺めるという、
自分の中の観覧車の概念が覆された瞬間でした。パリという街は、歴史的な
外観がそのまま残され、いつまでも大事に使い続けるという信念がある反面、
最新式のものも惜しみなく導入するという「攻め」の姿勢も大事にします。
歴史的なものと最新式なものとの絶妙な同居。それがこの街の魅力の1つです。
8、Water Lily Part 2
トリオの 2nd.CDアルバム『Fingers Dance』に収録された“Water Lily”の
2楽章という名目で作らせて頂きました。この曲が作られたのは2010年の
初め頃だったので、こちらも少し前の作品になりますが、モネの代表作である
“睡蓮”の連作に肖って、自分もそういった形式の作品を目指してみたのです。
最初の“Water Lily”よりシンプルな部分が多く、特に後半のピアノソロでは、
このトリオの特徴であるインタープレイな部分がより滲み出ていると思います。
9、Carnaval
比較的新しい曲で、謝肉祭を意味する単語の曲でもありますが、自分は
祭りが終わった後の儚さを表現してみました。メロディのセクションは
そんなに種類がありませんが、コードとのハーモニーは複雑です。
短い時間に様々なハーモニーを表現してきますが、後半部では一転して、
同じフレーズの中でのドラムソロに突入します。そしてエンディングには
冒頭と同じメロディをピアノでとり、あっという間に終演を迎えるのです。
10、Veins of Leaf
葉の葉脈という意味の“Veins of Leaf”。ピアノのメロディが主体となって
いる綺麗な曲に仕上がりましたが、ここでは一定のリズムに捕われない演奏に
御注目下さい。ピアノトリオという編成では、ベースとドラムは基本的には
リズムのビートを担う役割があるのですが、ここではメロディに寄り添う
部分が多く、正に3人が奏でるメロディで曲が作られているかのようです。
自分の音楽のルーツであるクラッシックの要素も見出だせて頂けたら幸いです。
11、Casa Familia
2013年初頭の作曲後、多くの方を惹き付けてくれた“Casa Familia”。
スペイン語で“Casa”は「家」、“Familia”は「家族」という意味ですが、
バルセロナを旅行した際に見てきた建物には、これらの言葉で名付けられ
ているものが多くありました。ここでは、家と家族というものの大事さに
ついて今一度振り返り、素直にその感情を曲にしたまでではありましたが、
その素直さが受け入れられたのかもしれません。非常にメロディアスな
曲ですが、途中には変拍子も取り入れる等、実は癖のある曲なのです。
その部分を加味しても多くの方に好んで頂けたというのは嬉しい限りです!
12、Monte Fiesole
トリオの 1st.CDアルバム『Pictures』にも収録されている曲ですが、
ここではソロピアノでの演奏とさせて頂きました。トリオ編成の時とは
異なり、ソロピアノという状況は自由が多過ぎて、録音に試みるだけでも
覚悟が必要なのですが、その分やり甲斐も多く感じています。恐らく、
自分にとってソロピアノ演奏というのも、1つのオリジナル曲の表現の
仕方なのだと思いました。ここではテーマのメロディを大事に奏で、少し
だけ変化を付けてエンディングに繋げていきました。この曲のトリオでの
初演から何年も経ちますが、また1つのスタイルが見付けられたと思います。
…以上になります。長々とお付き合い頂き、どうもありがとうございました。今日から自分はこのCDを持ち歩いて仕事に向かいたいと思いますので、どうぞチェックしてみて下さいませ。それでは、今後ともどうぞよろしくお願いします!
ヨーロッパの空気を感じながらも、曲によっては初めて聴いた日の
ライブハウスの空気も二重に旅してしまって…。
3人の音の会話、ほんとうに素晴らしいです。
ライブでいえばアンコールのような場所のMonte Fiesoleで、最後
のフレーズが繰り返されるところ、大好きです。名残惜しさが沁み
てきて、繰り返しCDを聴くことになるのです。
そして本日、ヴィレッジヴァンガード特典を!なんと、必見ではあ
りませんか、手に入れられてうれしいです。この映像は、昨年の展
示の時のものと同じものでしょうか?差し支えなければ教えてくだ
さいませ。これを見て、音と目からの世界観がより充実です♪
ありがとうございます!…これからも良い作品を作り続けます!
>おちゃさん
御購入ありがとうございます。そして、何度も何度も聴いて
頂けているようで嬉しいです。確かに、ライブでも聴いていた
曲が、改めてCDというものを通して、いつでも聴けるという
状況になるのは良いですよね。ライブとは違った雰囲気も
楽しめるのではないかと思います。ヴィレッジヴァンガードの
特典は、展示のものと同じ筈ですよ。…とは言え、それはまだ
自分も手元には無いので確認は出来ないのですが…(笑)。
目と耳と、様々な側面から『Voyaging』して下さい♪