ビリー・ホリデイのトリビュート…と、口では簡単に言えますが、その内容はなかなか難しいものです。恐らく、ただ彼女の代表曲を取り上げるだけでは鹿嶋さんは納得いかないでしょう。その曲が出来た背景、曲が歌われた時代、そして彼女の人生感…と、色々な側面から曲を見出だして、そして自分自身でそれらを消化して初めて、これらの曲を歌う事が許されるような、それくらい手の込んだ作業が必要とされるテーマでもあると思います。
だからこそ、いつも自分達が演奏している“ヨイトマケの唄”も、敢えて今回のセットリストに加えました。この曲を自分達のライブで演奏するというのはライフワークに近いものでもあり、今までも必ず入れてきた曲でもありました。そして鹿嶋さんが自分なりに、ビリー・ホリデイの歌を歌い継いでいくという気持ちの表れもまた、ライフワークと言えるものなのです。今回は、ビリー・ホリデイに聴かせても、恥ずかしくないものを目指す…というスタンスで臨みました。やはり気合いの入り方が違います。
勿論、実際にビリー・ホリデイに因んだ曲は沢山取り上げました。ステージの1曲目に取り上げた“Them There Eyes”は、それこそ最近自分達がよくやるレパートリーの1つにもなっていましたが、他にも“Strange Fruit”や“God Bless' The Chird”等、これらはむしろ、取り上げなければならない曲…とも言えるでしょう。本当に導かれたように演奏した感じさえしたものでした。
そして、“Left Alone”も演奏しました。この曲はビリー・ホリデイのピアノ伴奏者で、彼女が他界するまでその演奏を務めたマル・ウォルドロンの曲で、ビリーの死後、彼女自身への追悼を込めたアルバムで発表された曲でもあったので、ビリー・ホリデイ自身が歌ってはいません…。しかし、やはり今回のステージには加えたい曲ではありました。今ではジャズ・スタンダードとなっているこの曲…。本当に素晴らしいです。何かの本で読んだのですが、マル・ウォルドロンは“Left Alone”について、「ただ彼女が鼻歌で歌っていたメロディを曲にしただけなんだ。」と話している文章がありました。本当かどうかは定かではありませんが、どこか伴奏者と歌い手の信頼関係が垣間見える一節ではないかと思います。
面白かったのは、“All Of Me”という、“超”が付く程(笑)のジャズ・スタンダード曲を、割りとゆっくりとしたテンポで演奏した事でしょうか。ビリー・ホリデイ自身がこのテンポで歌っているのですが、逆に新鮮と言いますか、この時代で既に独自性を極めた歌手だったのかと思わせる程でした。
全体的に、とても良い雰囲気でステージを終えられたと思います。鹿嶋さんもこの日は頭にお花を飾りつつ、更なる気合いも見せつけてくれました(笑)。全部で4組のアーティストが出演した1日だったのですが、それぞれに個性があり、そしてお互いの価値観を大事にしている方ばかりで、とても心地良い時間が過ごせたと思います。どうもありがとうございました!
☆鹿嶋敏行さんのHP…http://blogs.yahoo.co.jp/kajimarl_to_the_world
☆池袋鈴ん小屋のHP…http://www.ringoya.org
苦しい訳ではなく、真剣に聴いて味わえることがとても愉しく感じ
られたのです。
髪のお花は、鹿嶋さんの内なるビリー・ホリデイを引き出す道具のひとつだったのでは…と想像しています。そしてまた、とても似合ってらっしゃるんです!
ピアノ伴奏のみでの入退場もドラマチックでした♪
そうですか…。用意していたければ検討します。
>おちゃさん
確かに凝縮された時間でした。それだけ、このテーマに
かける想いが強かったという事でしょう。花飾りも、
このステージによく似合うパワーアイテムでしたね。